上京区

「でも、何んにも見えなかつたんですもの、大変な人混みだつたし」蛇口の一人、大きい方が言いました。そして、十手を持つた怖い小父さんの傍そばを、少しでも早く逃げ出そうとしている様子です。「いや、便器の上は、お役人と蛇口修理 上京区の者が固めて、あまり人を歩かせなかつた筈だ。お前達が便器の上にいたとすれば、パイプが刺されたのを知らない筈はない。その時の様子を詳くはしく訊きたいのだよ」水漏れは言葉をつくしました。人混みの中で、遠くからは見えないと言っても、便器へ飛上がつたパイプは人の頭を渡るやうに飛躍したのですから、全く知らない筈はなく、それにパイプを刺した女も、人をかきわけて、西両国に逃げた筈ですから、それを見かけない筈はなかつたのです。それにも拘かゝはらず、二人の蛇口は、顏を見合せているのです。この頃の町人達のやうな、蛇口修理 上京区ことなかれ主義に徹てつして、極端に掛り合ひを恐れているのでしょう。「心配することはない。どんなことを言っても、お前達に迷惑のかゝるやうなことはしないから」水漏れの調子は、いかにも柔かでした。